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英語の時制という文法について解説をします。
日本語では、過去・現在・未来という時間軸を分けるために、「~だろう」(未来)、「~だ」(現在)、「~だった」(過去)というものをざっくりと分けていく用法があります。
これと同じように、英語でも「時制」という考え方の中に、時間軸と動作・状態の2つの視点を含めた用法が存在します。
そのため、時制は、英語の文章のもっとも基本となる考え方のひとつです。
そもそも、文章の構成は、主語と動詞(述語)に分かれています。英語の場合は、その動詞の種類によって、文章の文型が、第1文型から第5文型の中のどれかに決まります。
ただ、それだけでは、「いつ」「どのような形で」動作したのかを文章で表現することができません。
そのため、動詞に一定の「形」を与えて、文章が「いつ」「どのような形で」行われたものなのかをわかりやすくするために、「時制」という文法を利用します。
そして、「いつ」行われるものかということを明示するために、時制の各用法では、ある種の副詞(節)をよく利用します。
以下では、時制の各用法を、例文の副詞に注目しながら解説します。
英語の文法では、過去・現在・未来を表す文法をそれぞれ「過去形」「現在形」「未来形」という形で表現します。
これが英語の基本となる時制です。
実際の用法としては、
過去形:彼は昨日テニスをした。
He played tennis yesterday.
現在形:彼は毎日サッカーをすることが好きだ。
He likes playing soccer every day.
未来形:彼は来年高校に入学するだろう。
He will enter high school next year.
といった使い分けをします。
「過去形」「現在形」「未来形」は、それぞれ
過去形:過去のある時点での出来事を表現する
現在形:繰り返し行う習慣や普遍的真理(たゆまず行われていること)を表現する
未来形:未来に起きると予想される出来事や、未来に行いたいことを表現する
という用法の違いがあります。
用法を見ればわかる通り、過去形では過去を示す副詞(例文ではyesterday)とともに利用します。
また、現在形は、習慣を表現する場合は、現在の繰り返しの動作を表現できる副詞(例文ではevery day。これ以外にもevery Sundayなども利用される)とともに利用することが多いといえます。
さらに、未来形では、当然未来を表現している副詞と一緒に利用することが一般的です。
それ以外の英語の応用時制として、進行形・完了形・完了進行形が存在します。
例えば、現在時制の中で動詞が進行形になる場合として、
現在進行形:彼はテニスをしているところだ。
He is playing tennis.
現在完了形:彼は学校に着いたところだ。
He has arrived at his school.
現在完了進行形:彼は二年間この仕事をし続けている。
He has been working this job for two years.
といった英文があります。
ざっくりとした使い分けは、
進行形:動作の進行している様子を表す
完了形:動作・状況がいつからいつまで継続・完了しているかを表す
完了進行形:動作・状況がいつからいつまで継続し続けているかを表す
という使い分けをすることになります。
(完了形と完了進行形の違いが分かりにくいと思いますが、例文で後述します)
つまり、ベースとなる過去形、現在形、未来形という時制に、応用時制として、進行形・完了形・完了進行形を組み合わせることによってできる時制(全12種類)が英語で使用される時制の全てになります。
ただ、そういわれても、一度にすべてを理解することはできませんので、それぞれのパターンを英文でもう少し詳しく検討してみましょう。
さて、前節にて英語の時制は、全部で12種類に分かれていることを説明しました。
全12種類を①~④に整理してみましょう。
①まず、英語の応用時制として利用する進行形・完了形・完了進行形を全く利用しない一番単純なパターンとして、過去形、現在形、未来形というものがあります。
例文は、さきほど登場したものと同じです。
過去形:彼は昨日テニスをした。
He played tennis yesterday.
現在形:彼は毎日サッカーをすることが好きだ。
He likes playing soccer every day.
未来形:彼は来月高校に入学するだろう。
He will enter high school next month.
また、willを使わない未来形の表現としては、「be going to~」を利用した表現もあります。
未来形2:彼は来月高校に入学するだろう。
He is going to start high school next month.
現在形と比較すると、過去形は動詞の原型に「ed」という文字をつけるだけで過去時制になります(ただし、動詞の過去形の綴りは、動詞の原形の綴りによって変わることがあるため、綴りの間違いには十分注意しましょう。詳しくは、完了形の箇所で後述)。
それに比べて、未来を表現する未来形の場合は、「will」という助動詞を利用する場合もあれば、「be going to~」という慣用句を使って未来の予定を表現する場合もありえます。
また、過去形について、追加しておくべき意味としては、「過去○○をしていた」ということは、「現在は、もう○○をしていない」というニュアンスが含まれていることに注意をしましょう。
つまり、上の例文で説明するとすれば、
過去形:He played tennis yesterday.
和訳 :彼は昨日テニスをした(今はテニスをしていないようだ)。
という日本語が適当です。
このように、英語における過去形は、「過去と現在とが違う状態になっている」というニュアンスを表現する際によく利用します。
逆に、「過去も現在も同じ状況である」ということを表現する際には、③の「完了形」か、④の「現在完了進行形」をうまく使って表現することになります。
②次に、動作の進行を表現するパターンとして、過去進行形、現在進行形、未来進行形という時制の使い分けがあります。
まず、例文を見てください。
過去進行形:彼は前学期、歩いて通学していた。
He was walking to school last semester.
現在進行形:彼は今学期、歩いて通学している。
He is walking to school this semester.
未来進行形:彼は来学期、歩いて通学するつもりだ。
He will be walking to school next semester.
進行形の特徴は、動詞の直前にbe動詞を配置し、その直後の一般動詞を進行形(~ing)にすることです。
この進行形によって、「その時、何をしている状態になっているのか」ということを表すことができます。
ここで、一つだけ動詞の種類について、説明をしなくてはなりません。
それは、「状態を表す動詞」を状態動詞、「動作を表す動詞」を動作動詞と呼び、原則としては、動作を表す動作動詞にINGをつけることによって、進行形を作ることが多いです。
動作を表す動詞は、上の例文のような「walk」などの動詞です。
彼は今学期、歩いて通学している。
He is walking to school this semester.
「walk」は動作を表す動作動詞であるため、進行形にしても何ら問題はありません。
ただ、状態を表す状態動詞は、進行形にすると意味がおかしくなる場合があるので注意して下さい。
例えば、下の例文のようなものです。
マイクは記憶力がよい。
Mike has a good memory.
彼女は怒っている。
She is angry.
1つ目の例文は、原則進行形にすることはできません。(Mike is having a good memory.とは言えません)
ただし、「一時的にそういった状態になっている」ことを強調する場合に、状態動詞であっても進行形をとる場合があります。
これは、応用的な文法なので、知識としてとどめておくだけでも構いません。
例えば、先ほどの例文の中の2つ目の例文を少しだけ変えてみましょう。
彼女は一時的に怒っている。
She is being angry.
この英文は、be動詞という状態を示す動詞を進行形にしている状態になっていますが、間違いであるということはできません。
第三文型(SVC)で、「彼女=being angry(怒った状態)」になっているということを表します。
be動詞だけなく、一般動詞でも同様の用法により、「(一時的に)○○している」状態を示すことがあります。
③そして、動作の完了に重きを置いた、過去完了形、現在完了形、未来完了形という時制の使い分けがあります。
説明の都合上、まず現在完了形から説明します。
現在完了形は、「動作の完了」や「経験」、「過去から継続した状態」を表すといわれることが多いです。
現在完了形 動作の完了:彼は駅に着いたところだ。
He has arrived at the station.
現在完了形 経験:彼はイングランドに何度か行ったことがある。
He has been to England several times.
現在完了形 継続した状態:彼らが結婚して2年が経過した。
They have been married for five years.
過去形が「現在は過去とは違う」ことを暗にほのめかす一方で、現在完了形は、過去から現在までの動作の継続が意識されていることに注意してください。
ただし、現在完了形では、過去から続いていた動作が現在には完了している場合が多いです。
上の例文では、「学校に着いた」「行ったことがある」という表現も、現在にはすでに動作が終了済みであることがニュアンスとして伝わってきます。
過去から現在にかけての時間軸を継続して述べたい場合は、現在完了形以外にも、現在完了進行形を利用することもできます。
なお、現在完了形で継続した状態を示す場合は、期間を示す副詞節とともに利用することが多いことも特徴です。
完了形においては、動詞の綴りが変化します。
原形―過去形―完了形の順に動詞の綴りが特徴的に変化するものがあるので、文法書などを見て特徴的な活用をする単語の綴りは、しっかりと覚えるようにしましょう。
動詞の原形に「ed」をつけるだけのパターン:stay―stayed―stayed
動詞の原形の語尾が微妙に変化し、その後に「ed」をつけるパターン:study―studied―studied
動詞の意味に応じて、過去形や完了形の綴りが変化するパターンもあります。
lie―lay―lain(自動詞:横たわる)、lie―lied―lied(自動詞:嘘をつく)
・過去完了と未来完了
それでは、過去完了と未来完了はどのような時制なのでしょうか。
「過去完了形」は、「ある過去から、より現在に近いある過去」への時間軸を継続して述べる場合に利用します。
「未来完了形」は、「ある時点から現在よりも先にある未来」への時間軸を継続して述べる場合に利用します。
これが、完了形という時制のポイント中のポイントです。
完了形というのは、一定の期間の間に何らかのことがなされることが前提となっているということを意識することが大事です。
それでは過去完了形の例文を紹介します。
過去完了形 過去の継続した状態:彼女は日本に来るまでの10年間数学教師だった。
She had been a mathematics teacher for ten years before she came to Japan.
過去完了形は、過去のある時点(例文では日本に来た時点)からさらに過去にさかのぼった期間だけ、ある状態や動作が継続していたことを示します(例文では数学教師が10年間継続)。
ざっくりといって、「現在完了形の過去形」とイメージすれば理解しやすいです。
この用法の場合は、期間を示す副詞節(例文ではfor以下)とともに利用することが多いです。
過去完了形 過去よりも過去であること示す(大過去):約一週間前に購入した財布をなくしてしまった。
I lost my wallet I had bought about a week ago.
過去完了形のうち、「過去のあるとき(過去形で示す)よりも、さらに過去のこと」を表す場合には、「大過去」という用法が利用されます。
例文では、財布を自分で購入した時点のほうが、財布を失くした時点よりもより過去であることから、財布を購入した時点が過去完了形で表現されています。
過去完了形の大過去の用法では、期間を示す副詞ではなくて、過去の一時点を示す副詞とともに用いることが多いです(この点は、過去形と同じです)。
未来完了形:彼は明日の朝までには駅に着くだろう。
He will have arrived at the station by tomorrow morning.
例文は、「現在完了形 動作の完了」の例文を未来形にして作成しました。
未来完了形とはいえ、未来形の一種であるため、未来を示す副詞とともに利用します。
未来完了形は、「現在完了形の未来形」をイメージすればわかりやすいです。
④ 最後に、どの時点からどの時点までの動作の継続なのかということを表現するために、過去完了進行形、現在完了進行形、未来完了進行形という時制の使い分けがあります。
最もシンプルな現在完了進行形から解説します。
現在完了進行形:彼は五年間英語を勉強し続けている。
He has been studying English for five years.
現在進行形は、状況や動作の完了や継続、経験など多義的な要素を伝えることが可能です。しかし、現在完了進行形では、「過去のある時点から現在までの期間、○○をしている」という動作・状況が継続した期間をより明確に示すことができます。
例文の場合は、「5年前から今の時点まで」一貫して英語を勉強し続けているということがわかります。
現在完了進行形では、「いつからいつまで」の動作・状況の継続なのかが明示できることがポイントです。
現在完了形と現在完了進行形の違いは、下記のような説明をすることも可能です。
現在完了形は、「過去から現在までの動作・状況の継続」を意味することもあれば、「過去から現在まで行っていた動作・状況の完了」を意味することもあります。
つまり、現在完了形の文章では、現在すでに動作や状況が完了している場合もあります。
一方、現在完了進行形は、現在すでに動作や状況が完了していることはありません。
むしろ、現在完了進行形は、「一貫してある動作や状況が継続している」ということがポイントになります。
また、過去完了進行形は「現在完了進行形の過去形」、未来完了進行形は「現在完了進行形の未来形」というのが主なイメージになります。
過去完了進行形:彼はニューヨークに行くことを決意するまでに五年間英語を勉強し続けていた。
He had been studying English for five years before he decided to go to New York.
上の例文では、彼がニューヨーク行きを決意するよりも、英語を勉強し続けていたときのほうが時間軸的には過去になるため、主節の時制として過去完了形(動作の継続をしているため過去完了進行形に変換)を利用することになります。
未来完了進行形:彼は来月で五年間英語を勉強したことになる。
He will have been studying English for five years by next month.
上の例文は、未来完了進行形で動作の完了を示す文章です。
ただ、かなり堅苦しい表現のため、実際にはあまり利用しないことが多いようです。
以上、①~④までの英語の時制の種類について、簡単な解説をしてみました。
まず、ベースとなる過去形、現在形、未来形という時制に、進行形・完了形・完了進行形を組み合わせて、英語の時制が全部で12種類作れることを解説しました。
そして、「時間軸」と「動作か状態か」の2つの軸を中心にして、時制の各用法に特有の意味があることを例文で解説しました。
時制を覚えるだけでも、いろいろな用法があり、なかなか大変だと思ったかもしれません。
ただ、英文法というものは、本当にシンプルにできています。
ですから、心配無用です。
繰り返し学習していくと、「そんな簡単なものだったか」と思うくらい、すぐに理解できるようになります。
・時制と助動詞と態を組み合わせて英文を作る
この英語の時制については、動詞の前にさらに様々な種類の助動詞が加わることにより、文章に感情やニュアンスが加わって、文章の細かい表現ができるようになっています。
また、動詞の態(たい)を変えることによって「~する」(能動態)、「~される」(受動態)といった文章を組み立てることもできるようになっています。
今回は、時制の解説に重きを置いているため、助動詞や動詞の態の解説までは行わないこととしています。
英語の文法は、英語の動詞の時間軸と動作の様態を表す「時制」という考え方と、助動詞によるニュアンスの表現、動詞の態の種類によって、文章全体の意味が細かく決まってくるという仕組みになっています。
今回の記事では、英語の文法のうち「時制」という考え方に慣れて、英語の時制を自由自在に使えるようになっていきましょう。