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〈使役〉の文とはどういったものでしょうか。
現代の日本語だと、「〜せる・〜させる」という文、また、古文でも「〜す・〜さす」といったフレーズに聞き覚えがあるでしょう。
英語の授業では〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉といった単語が、使役構文に使われる動詞、つまり〈使役動詞〉として学ばれています。
中学校の英語の授業で、先生が「makeには2つの意味があります。 ひとつは〈作る〉。
では、もうひとつは何だったでしょう? そう! 〈〜させる〉です。それが使役なんですよ!」
などと教わった経験がある人もいるのではないでしょうか。
しかし、そのような使役の教え方には、若干修正が必要です!
英語の場合、〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉そのものが「〜せる・〜させる」という意味なのだ、というわけではありません。
英語の〈使役〉は、これらの動詞が持つ元来の意味合いから、〈周りの人や物などに対して「働きかける」動きをすることがある〉というのに過ぎません。
極論を言えば、「〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉は使役動詞だ」というのも少し無理があるかもしれません。
「これらは使役の働きができる単語である」というのが正しいのでしょう。
そこで、ここでは一般的に使役動詞と呼ばれる〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉の持つ本来の意味合いをとらえた上で
『周りの人や物などに対して「働きかける」』という動き=使役についてまとめてみたいと思います。
一般的に使役の文を作るのに使われる〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉はそれらが持つ意味合いから『周りの人や物などへ働きかけ』て、それが使役という役割を果たしています。
※ちなみに、〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉のほかに、〈help〉という動詞も、これらの動詞と同じような働きをします。ただ、この場合、日本語訳が「〜せる・〜させる」から逸脱するため、ここではあえて除外し、後述する予定です。
一般的に、使役に関する英語の学習の中で「使役動詞」という名前で呼ばれていて、使役構文を作る、主な動詞は次の3つです。
〈make〉〈have〉〈let〉
これら3つの動詞は、使役構文の中で同じように使われます。
They made their children try again.
(彼らは、子供たちに再挑戦させた。)
He had his father repair his bike.
(彼は、お父さんに自転車を修理してもらった。)
My mother let me use her bag.
(母は、私に彼女のバンクを使わせてくれた。)
上の3つの英文を見比べてみると、〈make〉〈have〉〈let〉の後に、使役で働きかける相手が来て、その後ろに動詞の原形が入っています。
この状態の動詞の原形は、英語の文法で『原形不定詞(不定詞だが、toを伴わない動詞の原形)』と言います。
使役構文を作る〈make〉〈have〉〈let〉は、このように〈make〉〈have〉〈let〉+ 働きかける相手 + 原形不定詞(=動詞の原形)という形で、使役として働きます。
次に、〈make〉〈have〉〈let〉を使ったそれぞれの使役構文の、日本語訳の方に注目してみましょう。
They made their children try again.
(彼らは、子供たちに再挑戦させた。)
He had his father repair his bike.
(彼は、お父さんに自転車を修理してもらった。)
My mother let me use her bag.
(母は、私に彼女のバッグを使わせてくれた。)
見てみると、同じ使役の文章でもそれぞれ少しずつ意味が異なっていますよね!
イメージ的には、makeを使った使役の文は、主語であるTheyに「よーし!子供たちにやらせるぞ!」というやる気のようなものが感じられます。
haveを使った使役の文には、そのような主語のやる気は感じられないですが、やはりmakeの文と同じように、相手his father にやらせる、あるいはしてもらう、という意味合いになっています。
letを使った使役の文は、主語であるMy mother の、相手meに対する寛容さ・優しさがなんとなく感じられませんか?
さらに、〈get〉という動詞も、上の3つの動詞と同じように使役の表現を作り出します。
こちらは、上で紹介した3つの動詞とは、若干使い方が違っています。
She got Tommy to take care of her dog while she was away.
(彼女は、出かけている間 トミーに犬を面倒みてもらった。)
英文のほうを見てみると、先ほど説明した〈make〉〈have〉〈let〉の文とは違い、
〈get〉の次に使役で働きかける相手がきたあとは、〈to+動詞の原形〉となっています。
〈get〉+ 働きかける相手 + to+動詞の原形
という形です。
日本語訳のほうは、〈get〉を使った使役では、主語である Sheが
相手 Tommyに対して犬を面倒みてもらうために、積極的に行動を起こしたという背景がかんじられます。
長くなったので、ここで〈make〉〈have〉〈let〉+〈get〉について
簡単に述べてきたことを、いったんまとめてみましょう。
★〈make〉〈have〉〈let〉の使役
〈make/have/let〉+〈働きかける相手〉+〈動詞の原形〉
★〈get〉の使役
〈get〉+〈働きかける相手〉+〈to+動詞の原形〉
★それぞれの使役の意味合いの違い
・〈make〉の使役は、主語に「やらせるぞ!」というやる気のようなものが感じられる。
・〈have〉の使役は、makeの使役のような主語のやる気は感じられないが、相手にやらせる、あるいはしてもらう、という意味合い。
・〈let〉の使役は、相手に対する、主語の 寛容さ・優しさがなんとなく感じられる。
・〈get〉の使役は、主語が、相手に対して積極的に行動を起こしている雰囲気。
使役の文を作るそれぞれの動詞が持つイメージとともに、それぞれの使役の意味合いがつかめてきたでしょうか?
では、次にそれぞれの動詞の使役表現について、もう少し深く考えていきましょう。
この項目の題名の最初の部分に注目してください。
「自分の手で物事や状況を生み出す・引き起こすmake!」
これが、〈make〉を使った使役のポイントになります。
〈make〉という単語は、中学校の英語で比較的早い時期に学ぶので、
みなさんにとっても親しみ深い動詞の一つではないかと思います。
しかし、先ほども述べたように、中学の英語の授業で、先生が
「makeには2つの意味があって、ひとつは〈作る〉。もうひとつは〈〜させる〉ですよ!」
と説明されるのを聞いて、それを丸暗記していたという人は、一度その内容を取り払ってください。
そして、この項目の題名にあるとおり、
〈make〉=「自分の手で物事や状況を生み出す・引き起こす!」というイメージを頭に浮かべてみてください。
ここで、使役以外の〈make〉の例文を見ると、なんとなくそのイメージがはっきりしてくるのではないかでしょうか。
My mother makes a lot of rice balls every morning.
(お母さんは毎朝たくさんのおにぎりを作る。)
お母さんが、一生懸命おにぎりを作り出している様子が目に浮かびますよね。
この〈makes〉にも、主語であるお母さんの「よーし!作るぞ!」と意志がこめられているイメージです。
他にも、makeの文を見てみましょう。
The coffee made a stain on the carpet.
(コーヒーはカーペットにしみをつけた。)
こぼれてしまったコーヒーが、カーペットにしっかりとシミを残してしまったことが伝わってきます。
主語であるコーヒーは人間ではありませんが、しっかりと〈made〉=やってしまって、しみという結果を残した、というイメージです。
He made the right decision.
(彼は正しい決断を下した。)
この〈made〉には、彼が「よーし!こうするぞ!」と決断するに至った強い意志がこめられているイメージが明らかに感じられますね!
つまり、これらの例文から分かるのが、〈make〉という単語には、その主語の強い意志がこめられていたり、あるいは、その主語が何かをやってしまった・やって結果を残した、というイメージがあるということです。
ここで、この項目のもともとの対象である、〈make〉を使った使役の例文に戻って、確認してみましょう。
Johnny made his friends go to the station.
(ジョニーは友達を駅へと行かせた。)
The film made me cry.
(その映画は私を泣かせた。)
まず、はじめの文でのジョニーさんは、友達を、「彼の意志を持って」行かせたのが伝わってきます。
次の文では、映画が私にしっかりと働きかけ、私が泣く、という結果を残したのがわかりますよね。
どちらの文の〈made〉からも、使役以外の文例にもあった、〈make〉のもともとのイメージが感じられるのです。
〈make〉=「自分の手で物事や状況を生み出す・引き起こす!」というイメージ。
これは、使役の文でも共通のイメージなのです。
このイメージさえおさえておけば、〈make〉を使った使役の文は大丈夫です!
〈have〉という単語も、〈make〉と同様で、英語の単語の中では親しみ深い動詞の一つでしょう。
中学校の英語などで教わった
She has some apples in her hands.
(彼女は手にいくつかりんごを持っている。)
といった文から、〈have〉=「持っている」という意味である、という固定観念を持っている人が多いのではないでしょうか。
しかしながら、実際に〈have〉の持つ意味合いとしては、日本語の〈持っている〉という言葉よりは、〈所有している〉という言葉のイメージの方が近いかもしれません。
そんな〈have〉による使役の文には、2種類の意味合いのパターンがあります。
まず、「してもらう」というイメージの使役を表す文。
Jack has his hair cut every weekend.
(ジャックは毎週末髪を切ってもらう。)
それから、被害など「よくない目にあう」イメージの使役を表す文もあります。
She had her bag stolen.
(彼女はバッグを盗まれた。)
上記の例文から考えてみて
〈have〉による使役の文は、先ほど説明したmakeによる使役のような「自分の手で物事や状況を生み出す・引き起こす」という意味合いではなく、「何の動きもなく、ただそうした状況になった=その状況をhaveした」というイメージでとらえてみるといいと思います。
〈let〉という単語には、Let's go camping!(キャンプに行こう!)のような文に使われる時の「勧誘」の意味もありますが、もうひとつletの後ろに〈働きかける相手〉となる語を置き、「相手が何かするのを許す」「何かものの動きを容認する」という意味合いをもつことが多くあります。
使役として〈let〉が働くときの意味合いは、この「相手・何かの動きを許す、容認する」のほうです。
そんな意味を持つ〈let〉を使った文といえば、昨今有名なのが
・Let it be (ビートルズの名曲の題名 )
・Let it go(ディズニー映画『アナと雪の女王』の劇中歌の題名 )
でしょう。
どちらの題名も、さまざまな日本語訳が紹介されており、どう訳せば正しく伝わるのか悩むところですが、
Let it be → 「それ(世界のあらゆる事柄?)はそのままの状態にさせよう」→「あるがままにしておこう」
Let it go → 「それ(おそらく、登場人物のエルサが今まで隠していた姿がみんなに分かったこと)はそのまま進んで行かせよう」
→ 「もう放っておこう・あるがままでいこう」
といったような意味なのでしよう。
〈let〉という語には、寛容さが感じられますよね!
〈let〉を使った使役の文は「相手の望むとおり・動きのとおりにさせる」という意味合いになります。
ちなみに、ここで〈相手〉というのは、人とは限らず、物でも構いません。
We will let you know before we get there.
(私たちがそこへ着く前に、あなたがたにお知らせいたします。)
I won't let that happen again.
(そんなことが二度と起こらないようにするつもりだ。)
日常でも使うシーンがたくさんあるので、ぜひ覚えて使ってみましょう。
〈get〉は「自ら働いてある状態になる、する」という意味合いを持つ動詞です。
例えば、次の文を見てください。
I got a nice bag at that shop.
(あの店でいいバッグを手に入れたよ。)
〈get〉は日本語で通常「手に入れる」と訳すことが多いですが、ここをもう少し詳しく説明すると、「持っていない状態から、自らが動いて、それを手に入れた状態にする」と言う意味合いです。
つまり上の文では「私はバッグを持っていない状態から、いいバッグを手に入れたいという意志で動き、それをとって手に入れた状態にした」ということになります。
そういった〈get〉が持つ意味合いを利用すると、次のような使役の文ができるのです。
She got Tom to clean up the room.
(彼女は、トムに部屋をそうじさせた。)
主語である Sheは、相手 Tomに対して、部屋を掃除してもらおうと、働きかけてお願いしたり、手配したりしたようです。
この使役の文からは、主語本人が、何か積極的に行動を起こして、相手にやってもらう雰囲気が伝わってきます。
つまり、そのような〈自らの動き〉によって、相手に何かをさせるという状態に至る、という使役が、〈get〉を用いた使役なのです。
重複になりますが、〈get〉を用いた使役は、後ろの動詞部分が〈原形不定詞〉ではなく、〈to+動詞の原形〉になるところがポイントです。
✖️ Let's get Mike give her a hand.
◯ Let's get Mike to give her a hand.
(マイクに彼女を手伝わせましょう。)
toを入れ忘れないよう注意しましょう!
これまで述べてきた使役の文を作る4つの動詞以外に、〈help〉という語を使って使役の文を作ることもできます。
その場合は、働きかける相手となる語を置いたあとに入れる動詞は、〈原形不定詞(=動詞の原形)〉でも〈to +動詞の原形〉でもどちらの形でもOKとなります。
〇 Learning about foreign countries helps us to understand the whole world.
〇 Learning about foreign countries helps us understand the whole world.
(外国について学ぶことは、私たちが世界全体を理解するのに役立つ。)
テストにこのような〈help〉文が出された時は、〈to〉が必要かどうか迷うことが多いので注意しましょう。
いかがでしたか。
〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉などの、使役として働くことができる単語で表現される、さまざまな文を見てきました。
ひとくくりに使役と言っても、〈make〉〈have〉〈let〉〈get〉という単語本来の意味合いから、少しずつ異なる意味合いの使役の文が作られることがお分かりいただけたでしょうか。
使役は、意味合いの違いが繊細で少し難しく感じられる文法ですが、その単語が持つ本来の意味合いをつかめば大丈夫です!単に丸暗記するのではなく、英語の単語そのもののイメージを感じながら、訳したり使用したりしてみてください。